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街までの道程は意外に長く、日が落ちる前にどうにか到着することができた
道中何度か猛獣の気配がしたものの、いずれも少ししたらフッと消え失せた
「…な~んか居るな…あそこ」
「確かに…ま、気にしててもしゃあないだろ」
「そーそー、右も左も分かんない内はリスク排除が基本だよね~」
「……ま、そうだな…で、一体この街はどっから入るんだ」
あの森から見えたのはどうやら街の一部だったらしく、眼前に広がるのは石で出来た壁壁壁…
「悠一、どうしよう。楓ちゃんがおねむだ」
「………………………」
楓は薫におぶさられながらうつらうつらとしている。どうやら慣れない環境に突然放り込まれたから精神的に疲れたみたいだな
だというのに何故森…というか崖だったが、それをずっと楓を背負って降りてきた薫は息切れ一つしていないのか…まぁ薫も中々スペック高いから当たり前っちゃ当たり前なんだが
「眠らせといてやれ。なんなら変わろうか?」
「冗談。こんな可愛い娘を手放すなんて死んでも嫌だよ」
「そう言うと思ったよ」
いつか百合の花が咲きそうな気がしてならないのだよ、俺は
「……ん~…あれ、多分門番だね~」
「…あぁ…あのオッサンか…へぇ…鎧に槍…マジで異世界らしいな、ここ」
「俺としては平穏無事に過ごしていたかったが…まぁ良いさ。とりあえずあそこから入るかね」
「…面倒事の予感がするけどね~…」
「こんばんは」
「あぁ、こんばんは…君達…どこから来たんだい?見たことの無い服装だが…」
「ただの旅の者だ。いい加減腰を落ち着けたくてね」
「その歳で…かい?親は…いや、すまない。野暮な質問だったね。衣食住の当てはあるのかい?」
…そういやまったく考えてなかったな…
俺が返答に困っていると、門番のオッサンが苦笑しながら行商人みたいな奴等で賑わう大通りを指差した
「この通りを真っ直ぐ行くと、一際大きな建物がある。建物に剣と盾をあしらったエンブレムがあるからすぐに分かるだろう。そこがこの国の首都、【ユークリッド】のギルド、【栄光の剣】だ。ますはそこに行くといい。ギルドに登録すれば暫くは宿舎に住めるからね」
なにこのオッサン、凄い良い人だったわ
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