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同じ日の午後。
集合場所は、いつもの公園。
そして今日集まったのは、裕太とその弟の啓太、魁人、俺の4人。
魁人は明日から函館に行ってしまうので、この夏休み中魁人と会えるのは今日が最後だった。
アヤは今日も習い事。
たしか金曜日だから、体操教室の日だ。
それから純も、今日はピアノのレッスンがあると言って公園には来なかった。
「あ~あ。家紋ライダーショー、行きたいなぁ・・・。」
そう呟いた僕に、他の3人が相槌を打つ。
こんな田舎では、滅多にヒーローショーなど見る事ができない。
子どもが少なく、おじいちゃんやおばあちゃんばかりの町。
だけどここには、大きな街にはない良い所も沢山あるんだ。
「喉乾いた!水飲んでくる。」
そう言って魁人は滑り台から下り、公園の真ん中にある水飲み場へと向かって行った。
今日はとても暑く、日差しも強い。
出掛ける前にお母さんが「帽子を被って行きなさい」と言った意味がよくわかった。
「ぷはぁ~、冷たくて美味しい!!」
水飲み場から、気持ちのいい叫び声が聞こえる。
こんなに暑い日でも、あの蛇口を捻れば冷たくて美味しい水がどんどん湧き出してくるのだ。
生まれた頃から見てきた『羊蹄山』。
この公園からも見えるあの大きな山の雪解け水が、僕たちが暮らすこの町の水道に通ってるんだって。
今はもう雪はないけど、少し前まで白い帽子を被っていたあの高い山。
もう見慣れたあの山だけど、あそこには『だいしぜん』の力がいっぱいあるんだってさ。
そんな『だいしぜん』の傍にあるこの町は、小さいけどいい所なんだ・・・って。
子どもの僕にはよくわからないけど、大人になればわかるって、そうお父さんが言ってた。
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