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「ねぇ、俊哉。あれ・・・。」 裕太が神社の方を指差し、俺の背中を突く。 呼ばれて振り向き、彼の指差す方を見ると・・・。 ・・・あの子だ!! 神社の駐車場を兼ねた砂利の空き地。 その周りに咲くシロツメクサの中に、あの子はしゃがんで、僕たちの様子を伺っていた。 しかし僕が振り向くと、あの子はプイッと後ろを向いてしまった。 ・・・やっぱり、嫌われちゃったのかな。 不安になり、思わず下を向く。 すると、水を飲み滑り台へと戻ってきた魁人があの子の姿を見つけ、ニヤニヤしながらステップを上がってきた。 「あっ!俊哉の事が好きな子・・・。」 ふざけてそう言った彼の口を慌てて塞ぎ、自分の唇の前で人差し指を立てて見せる。 しかし魁人は面白がり、ギャハハと笑い声を上げるばかりだ。 「なぁ、俊哉。 あの子も遊びに誘おうよ。」 そう言って魁人は、神社の脇にいるあの子に向かって大きな声で呼びかけた。 「おーい!」 思わずあの子の反応を確認する。 しかしあの子は、ただ黙って夏草の陰にじゃがみこんだままだ。 「あれ~?やっぱり僕じゃダメだよ。 俊哉が声を掛けなくちゃ!」 そう言って魁人は、狭い滑り台の頂上スペースで、僕の体を神社の方に押し出した。 押された時、少しだけバランスを崩して落ちそうになったけど、危ない所で啓太に助けられる。 「俊哉君、だいじょーぶ?」 まだ4歳の啓太は、僕の手を引っ張りながらニッコリと笑った。 そしてニヤニヤと笑う魁人に唆されたのか、俺にこんな言葉を投げ掛けたのだ。 「ねぇ、僕もあのお姉ちゃんと遊びたい! だから俊哉君、呼んできてよ。」 無邪気にそう言って笑う啓太に、僕は何も言えなかった。 彼に悪気はない。 ただ、兄さんである裕太やその友達の魁人が面白そうにしている姿を見て、真似して便乗しているだけなんだ。 溜め息を吐き、無邪気な啓太に「わかったよ」と答える。 そして僕は、シロツメクサに囲まれてしゃがむあの子を見つめ、大きく息を吸い込んだ。
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