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自由研究の題材が決まって、少し肩の荷が下りたような気がする。 近いうちに、町の図書館に行ってSLについて色々調べてみよう。 そんな事を考えながら、お母さんに手を引かれて小樽駅の駅舎を出る。 今日はとてもいい天気。 そして、とても暑い。 「お母さん、アイスクリームが食べたいよぉ・・・。」 額に汗を掻きながら、駅舎を背にして坂を下る。 通り道には、古い建物がいっぱいあった。 そしてお菓子屋さんやお土産屋さんの並ぶその先に見えたのは・・・。 「あっ!海!!」 漂ってくる潮の香り。 そして視界の奥には、建物の隙間からわずかに海の景色が顔を覗かせていた。 僕たちが向かっていたのは、小樽の観光名所としても有名な『小樽運河』だった。 そして運河沿いにある広場には人だかりができ、その正面には白くて大きなステージがある。 「お母さん、このステージ、何に使うの?」 僕がそう尋ねると、お母さんはニッコリ笑って人だかりの後ろに並んだ。 そして人の波を掻き分けながら、少しずつ前へと進んでいく。 ぎゅうぎゅうに立ち並んでいる大人の体を掻き分けながら、僕は必死にお母さんとお兄ちゃんの後を追いかけた。 ステージに程近い場所から、僕と同じ年くらいの子どもたちの声が聞こえる。 そして大人の森を抜けた瞬間、僕は嬉しくて思わず顔を緩ませた。 ステージの脇に大きく書かれた『家紋ライダー』の文字。 漢字が読めない僕でもわかる。 タイトルの横には、大好きな『ライダー・ノブナガ』の写真が貼ってあったんだから。 「お母さん!もしかして、ここにノブナガが来るの!?」 興奮し、僕の背後に立っていたお母さんに尋ねる。 お母さんは目を輝かせる僕にニッコリと笑みを返し、白くて大きい目の前のステージを指差した。 「お友達が教えてくれたのよ。 今日、小樽運河にノブナガが来る・・・ってね。」 最高だ! 本当に嬉しいよ・・・。 「お兄ちゃんもノブナガに会いたいって言うから、今日は俊哉の誕生日だし、小樽まで行こうかって2人で相談したの。」 そう言われて、隣にいるお兄ちゃんの顔を見る。 お兄ちゃんの顔は、僕の喜ぶ姿を見て満足気に笑っていた。 「お母さん、お兄ちゃん・・・。 本当にありがとう・・・。」
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