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――― せっかく帰りも海の景色を見ようと思ったのに、いつの間にか僕は眠っちゃってたみたい。 お母さんに起こされたのは、もうすぐ降りる駅に着く頃だった。 古い造りの駅舎を抜けて、駅前商店街を通って家に帰る。 ふと、お母さんが煉瓦色のビルの前で足を止めた。 そして目の前のショーウィンドウには、さっきノブナガが腰に付けていたベルトのおもちゃが飾られていたんだ。 「お母さん、見て!」 思わずノブナガと同じベルトを指差す。 するとお母さんは僕の反応に目を細め、僕とお兄ちゃんを連れてお店の中に入っていった。 「俊哉、1つだけおもちゃを買ってあげる。 お兄ちゃんは、今日は我慢してね。」 そう言ってお母さんは、僕を男の子のおもちゃがいっぱいある売り場に連れて行ってくれた。 そこにはさっきのベルトの他にも『家紋ライダー』と書かれたおもちゃがいっぱいあって、僕とお兄ちゃんは思わず大はしゃぎしてしまった。 そんな僕たちの様子を、お母さんは笑顔で見つめている。 「お母さん!僕、これにする!」 選んだのは、主人公の織田アヅチがライダー・ノブナガに変身する時に使う『家紋』の付いたベルト。 さっきショーウィンドウにあったものよりも凄くて、エンブレムの部分が本物みたいに光るんだって。 満面の笑みで変身ベルトの入った箱を抱えてお母さんの方へと向かって行くと、隣の女の子用のおもちゃを売るフロアに見た事のあるおじいちゃんが立っていた。 「あれ・・・?あの人・・・。」 思わず指差しお母さんに尋ねると、お母さんは「あら!」と言って、そのおじいちゃんに声を掛けに行った。 おもちゃの箱を抱えたまま、その様子をじっと見つめる。 「原口さん、こんにちは。お孫さんとお買い物ですか?」 お母さんが声を掛けたのは、斜向かいに住む原口のじいちゃんだった。 そしてその隣には、この前ラジオ体操の会場で見た小さな女の子が手を繋いで並んでいる。 ・・・もしかして!? こっそりと近付き、あの子の姿を探す。 もしかしたら、おじいちゃんと一緒にお買い物をしていたのかもしれない・・・。
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