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おもちゃが並んだ棚の陰から、ゆっくりと顔を出す。 辺りを見回してあの子の姿を探したが、原口のじいちゃんの近くにはいないようだ。 女の子のおもちゃが置いてある売り場には、原口のじいちゃんとあの子の妹、僕のお母さんの他には店員のお姉さんが1人いるだけ。 もしかしたら、あの子は家でお留守番をしているのかもしれない。 そう思って僕は、お兄ちゃんがいる戦隊ヒーローのおもちゃが置いてあるコーナーへ移動しようとした。 その時・・・。 「おじいちゃん、私、これが欲しい!」 その声に反応し、後ろを振り返る。 そして、その声の主と目が合ってしまった。 「あ・・・!」 思わず声が出た。 そこにいたのは、僕が捜していた女の子。 そしてその手には、僕と同じ『家紋ライダー』と書かれた箱があったのだ。 どうして、女の子なのに・・・? 戦隊ヒーローは、男の子が好きなもの。 それなのに、どうしてあの子は僕と同じ変身ベルトを欲しがっているのだろう。 僕がおもちゃの箱に注目していると、あの子は怪訝そうな表情を浮かべ目を逸らした。 そしてこの前のようにプイッと後ろを振り向き、女の子のおもちゃが売っているフロアへと歩いて行ってしまった。 また、話し掛けられなかった・・・。 どうして僕は、肝心な時に上手く話せなくなっちゃうんだろう。 本当は、「あの時はごめんね」って謝りたかったのに・・・。 落ち込みながら呆然とその場に立っていると、原口のじいちゃんと話し終わったお母さんが、僕のところに戻ってきてくれた。 「さぁ、そろそろ帰るよ。 俊哉、誕生日のプレゼントはそれでいいのね?」 お母さんにそう言われ、自分が持っていたおもちゃの箱を確認する。 あの子が持っていた箱と同じもの。 僕が先に買っちゃえば、真似した事にはならないよね・・・? 同じおもちゃを買って、真似っこしたと思われる事が少し気まずかった。 だけど、僕だってこのベルトが欲しかったんだもん。 「うん。これでいい。 お母さん、ありがとう!」
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