42人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
―――
家に帰るとすぐに、僕はお母さんに買ってもらった変身ベルトの箱を開けた。
お花のような形のエンブレムの裏には、電池を入れる場所がある。
そこの蓋を開けて単3電池を2本入れると、ベルトのバックルを合せる度にエンブレムがピカピカと赤く光った。
「ライダー・ノブナガ、只今参上!!」
テンションが上がり、ベルトを腰に付けて何度もポーズを決める。
そんな僕の様子を、お兄ちゃんは羨ましそうに見つめていた。
お母さんはキッチンへ行き、夕ご飯の準備を始めている。
シャカシャカとお米を研ぎながら、お母さんは僕たちにこう言ったんだ。
「2人共、夕ご飯ができるまで少し時間があるから、今のうちに絵日記書いちゃいなさい。」
そうだ。
今日のお出掛けの事を、絵日記に書こうと思っていたんだった。
僕とお兄ちゃんはリビングのテーブルに絵日記帳を広げ、24色の色鉛筆で絵を描き始めた。
電車の窓から見えた、太陽の光でピカピカ光っていた海水浴場。
それから、小樽運河とノブナガの事も書こう。
あとは・・・。
書きたい事が色々ありすぎて、僕の書いた絵はめちゃくちゃだった。
それを見ていたお兄ちゃんが、からかうように笑い始める。
「俊哉は下手っぴだなー。
それじゃあ、ノブナガが海で泳いでるみたいだよ。」
笑うなんて、ひどい。
僕なりに一生懸命描いたのに・・・。
お兄ちゃんの絵を覗くと、運河に掛かる小さな橋と人力車が描かれていた。
そしてその傍には、僕と同じ家紋ライダーショーのステージ。
それに比べて僕の絵は、青い海の近くにライダー・ノブナガがいて、絵の中心には僕とお母さん、お兄ちゃんがソフトクリームを食べてる姿が描かれている。
そして、その絵の隅っこには・・・。
「ねぇ、俊哉。この人、誰?」
隅っこに書いた、箱を持った女の子。
それを指差して、お兄ちゃんは首を傾げた。
「いいの・・・。内緒!!」
目立たないように小さく端っこに描いたけど、お兄ちゃんにはすぐに見つかってしまった。
恥ずかしくなり、自分の絵を腕で隠すようにしながら絵日記の続きを書く。
そしてその絵日記が完成した頃、玄関から「ただいま!」という声が聞こえてきた。
最初のコメントを投稿しよう!