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「お父さん、お帰り!
見て!これ、お母さんが買ってくれたの!」
仕事から帰ってきたお父さんに、誕生日プレゼントに買ってもらった変身ベルトを見せる。
するとお父さんはYシャツの上に巻いた青いネクタイを緩めながら、自慢げに話す僕の顔を見て嬉しそうに微笑んだ。
「おっ、いいもの買ってもらったな。
お父さんも一緒におもちゃを見に行きたかったよ。」
そう言った後お父さんはキッチンを覗き込み、再び嬉しそうな笑顔を作った。
食卓の上には、お父さんの大好物の蒲鉾が置かれている。
そしてその横には、大粒の苺の乗ったケーキが置かれていた。
「今日は俊哉の誕生会だよ。
そろそろ手を洗って、ご飯の準備をしなさい。」
「はぁーい!」
ニッコリと笑い、絵日記や色鉛筆を片付ける。
今日の主役は僕だ。
お腹一杯、美味しいご馳走を食べるんだもん!
完成した絵日記は、他の宿題と一緒に重ねて置いた。
お兄ちゃんには馬鹿にされたけど、今日の絵日記は最高の出来だったと思う。
だって、こんなに楽しい事ばかりの日はきっと沢山はないはずだもの。
本当は1枚の紙に描ききれないくらい、今日は最高の1日だったよ。
『―――
8月6日 てんき:はれ
きょうは、ぼくのたんじょうびです。
おかあさんとお兄ちゃんといっしょに、でん車にのって小たるにいきました。
でん車のまどからは、きれいな海が見えました。
本とうはおよぎたかったけど、水ぎがないからだめっておかあさんにいわれました。
小たるのえきには、SLきかん車がいました。
うんがまでいくと、ひろばにノブナガがきていました。
わるいてきとたたかってキックでたおしたノブナガは、とてもかっこよかったです。
またでん車にのってかえってきてから、こんどはおもちゃやさんにいきました。
おたんしょうびのプレゼントは、ノブナガのへんしんベルトにしました。
だけど、女の子がぼくとおなじへんしんベルトをほしいって、おじいちゃんにたのんでいるのを見ました。
ノブナガのベルトは男の子のものなのに、ちょっとおかしいと思いました。
夕ごはんは、おとうさんの大すきなかまぼこと、ケーキがあります。
きょうはとてもたのしかったから、またらい年もこうなればいいなと思いました。
―――』
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