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誕生日に貰った、家紋ライダーの変身ベルト。 僕は遊びに行く時はいつも、このベルトを装着して出掛けるようになった。 今日もどんぐり公園の滑り台は、僕たちのだけの基地となっている。 しかし、暑い日差しが照り付けるせいで、滑り台のスロープはとても熱くなっていた。 従って滑り台の上り下りにスロープは使えず、触ったら火傷をするかもしれないと気付いていた小学生の僕らは、場所を譲り合いながら階段や鉄の支柱を使って上り下りをしていたのだ。 「はい、今日のおやつだよ。」 いつものように、純が全員にお菓子を配る。 今日のおやつは、サラダ風味のお煎餅だ。 こんな暑い日は、チョコレートやキャンディはすぐに溶けてしまうから。 純のお母さんはそれを考えて、最近はお煎餅やクッキーなんかの溶けないお菓子を中心に持たせてくれていた。 「わぁっ!熱っ!!」 その声に驚き、思わずそちらを振り返る。 目に入ったのは、滑り台のスロープに腰を下ろした啓太の姿。 啓太はこの日短パンを穿いていて、太陽の熱で温まったスロープは、少し手を近付けただけでも熱いと感じる程に加熱されていた。 「啓太、大丈夫か!?」 慌てて兄さんの裕太が、熱さに気付かず腰を下ろしてしまった弟を立ち上がらせる。 しかし啓太の脹脛の裏は赤くなり、小さく赤いプツプツができ始めていた。 「もしかして、熱いところに座っちゃったからじゃないの・・・?」 小学生の僕たち4人は、トタンの張られた滑り台のスロープが熱い事に気付いていた。 しかしまだ幼稚園児である啓太は、きっとその事に気付かなかったのだろう。 狭い滑り台の頂上スペース。 その上に立っている事が、きっと疲れてしまったのだろう。 空いていたスロープ側のスペースに移り、そこに腰を下ろした啓太。 しかし脹脛を乗せたトタンはとても熱く、思わず驚いて大声を出してしまった・・・。 「どうしよう・・・。家に連れて帰る?」 「いや、啓太の家は鍵っ子だからダメだ。」 「ここから近い、純やアヤの家は?」 「うちも今日は、みんな仕事だって・・・。」 「それじゃあ、・・・俊哉の家は?」 僕の家なら大丈夫だ。 この公園からもそんなに遠くないし、みんなの家と違って僕のお母さんは仕事をしていないから。 「わかった!早く行こう!」
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