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そう感心しながら応急処置の様子を眺めていると、お母さんは僕たちに「見てると気になるから、先に遊びに行ってらっしゃい」と言った。
僕たち4人は、顔を見合わせる。
啓太の事が心配で急いで家に帰って来たけど、よく考えてみれば、僕たちは公園に自転車を置いたままだったのだ。
「じゃあ・・・、まずは公園に自転車を取りに行こう。」
そう僕が切り出して家の玄関を出ようとしたその時、「ちょっと待って」とあいつが言った。
「アヤ・・・、どうしたの?」
純がそう尋ねると、アヤは苦しそうにお腹を押さえ、申し訳なさそうな顔で僕らにこう言ったのだ。
「さっきからずっと、トイレに行きたくて・・・。
悪いけど、ちょっとだけ待っていてくれない?」
呆れた。
どうしてそれを、もっと早く言わないんだよ・・・。
僕は溜め息を吐き、少しぶっきらぼうにこう答えた。
「わかったよ。
じゃあ、外に出て待ってるから、僕ん家のトイレを使って。」
そのやり取りに、お母さんはクスクスと笑っていた。
この近所の『ガキ大将』と僕が呼ばれている事。
もしかしたらお母さんも知っているのかもしれない。
アヤは急いで靴を脱ぎ、廊下の先にあるトイレに駆け込んでいく。
僕と純、裕太の3人は、アヤが用を足し終わるまで家の外の道路で遊びながら待っている事にした。
玄関先には、お兄ちゃんのサッカーボールがある。
どうやら今日は、ボールを持たずに出かけたらしい。
「ねぇ、サッカーやろうよ。」
僕はボールを拾い上げ、純と裕太を誘い家の前の道路へと出ていった。
歩道のない、細い脇道。
僕たちが遊ぶのは車道の上だけど、この道路にはほとんど車が通る事がない。
市街地から程近い、住宅地の中の細い小道。
その道路上に散らばって、僕たちはサッカーボールを蹴って遊び始めた。
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