【3】

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俯いたまま、彼女は何も応えてはくれない。 僕たち3人は、そのまま黙って彼女の表情に注目していた。 少しずつ、目が赤くなっていく。 そして下目蓋からは、もうすぐ涙が零れ落ちそうになっていた。 やっぱり、無理に誘うべきじゃなかったんだ・・・。 幼いながらに感じた罪の意識。 だけど、彼女を庭から連れ出してしまったから、裕太や純が一緒にいる手前、このまま何もせずに引っ込む訳にもいかなかった。 しかし・・・。 「おーい!お待たせー!」 その声にはっとし、声のする方を振り返る。 声の主は、さっきまでトイレに行っていたあいつだった。 僕の家の前で、アヤが僕たちの方に向かって呑気に手を振っている。 ・・・タイミング悪いなぁ。 ん、待てよ!? 手を振るアヤから視線を戻し、僕は裕太と純にこう頼んだ。 「ねぇ、裕太と純は、アヤと一緒に先に公園に行ってて。 僕もすぐに追いかけるからさ。」 僕の言ったその言葉に裕太と純は少し不可解そうな表情を浮かべ、顔を見合わせた。 しかし、僕の家の前では何も知らないアヤが手を振っているし、自転車はどんぐり公園に放置してきたままだったから・・・。 「・・・わかったよ。 先に行くから、早く来てくれよな。」 そう言って2人は、僕と彼女から離れ、アヤのいる方へと近付いて行く。 その2人の背中を、僕はじっと見つめていた。 さて・・・。 ようやく彼女と2人きりになれた。 せっかくチャンスを作ったんだから、ちゃんとあの日の事を謝らなくちゃ・・・。 だけど今の僕はとても緊張していて、頭ではわかっていてもなかなか言葉が出てこないんだ。 ・・・気まずい。 でも、男の子なんだから頑張らなくちゃ! 「ねぇ・・・。」 恐る恐る、彼女に声を掛ける。 そして答えのわかりきった質問を、泣き出しそうになっている彼女に投げ掛けた。 「僕たちの事、恐いって思った・・・?」 きっと彼女は何も応えてくれない。 だって、いつもそうだったから・・・。 項垂れたまま鼻を啜る彼女の肩から静かに手を下ろす。 そしてゆっくりとしゃがみ込み、俯瞰の方向から彼女の表情を伺った。
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