【3】

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彼女はずっと、僕が差し出した小指を見つめている。 そして少し迷いながら、ゆっくりと自分の小指を差し出した。 繋がった小指から伝わる、小さく震える彼女の振動。 そして僕の胸も、緊張と嬉しさによって高鳴っていた。 「約束・・・ね?」 ゆっくりと顔を上げ、小さな声でそう確認する彼女。 その表情は、今まで僕に見せていた恐い顔とは違う・・・。 ―――初めて笑ってくれた。 僕に向かってニッコリと笑うその笑顔は、本当に可愛い。 思わず、先に小指を差し出したはずの僕が怯んでしまう程だった。 「・・・ねぇ、そのベルト・・・。」 彼女は視線を落とし、僕の腰にあるあのベルトに注目した。 このベルトは、『ライダー・ノブナガ』に変身するための大事なもの。 ・・・そういえば、彼女もおもちゃ屋さんで同じこのベルトを欲しがってたっけ。 「これ、カッコイイしょ?」 自慢げに、腰に着けたそのベルトを光らせて見せる。 すると彼女はクスクス笑い、僕にこう話してくれた。 「私のベルトの方がカッコイイよ。 だって、ライダー・ヒデヨシのだもん!」 『ライダー・ヒデヨシ』・・・だって。 それは『家紋ライダー』のお話の中で、僕の大好きなノブナガの相方だった。 「いやぁ、ノブナガの方がカッコイイよ!」 そう言った後、僕は彼女にこう尋ねた。 「今度会った時は、一緒に遊んでくれる・・・?」 その言葉に、彼女は少しだけ表情を曇らせた。 だけど、その答えは・・・。 「いいよ・・・。 でも、もう意地悪しないでよね。」 当然だ。 こうやって話せるようになったんだから、もうあんな下らない意地悪はしないって、さっき約束したじゃないか。 「わかってるよ。 もし誰かにからかわれたら、今度は僕が言い返してやる!」 自分のした事を棚に上げ、誤魔化すかのように笑って見せる。 それに釣られ、彼女も一緒に笑ってくれた。 その可愛い笑顔が見たいから、僕はもう、君に意地悪をしないと誓うよ・・・。
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