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「あの時死にたくなったでしょ」
「な、なってないぞ」
「ならよかった!」
よいわけないだろう。お前のせいでこうして私は今、昨日と同じくリハーサルをやるはめになったんだからな。
「…もう我慢ならへんわァ!!」
王子役の進藤は我慢しきれなかったのか、小人役の工藤の胸を揉んだ。
またあいつは…
っといつものように呆れていたが、工藤は一般人の一味も二味違うらしい。
揉まれたまま、おもむろにインスタントカメラを取出し自分の方向に向け、シャッターをきった。しかもその一瞬だけ嫌がった顔をして。
勿論ハテナマークを浮かべている。私にも他の奴にもわからない。
「お金払って?」
どうやらわかったのは私だけらしい。
「だーかーら。お金払ってって」
もう手を離した方がいいと思うぞ、進藤。
「お…お金…?」
「うん!お金」
進藤はやっと理解したように、手を離して何歩か後ろに下がった。周りの連中には、まだ理解できてないのがいる。
「ワイは!ワイはそんなつもりでやったんちゃうねん!」
他にどんなつもりがあるんだ。
「いや。証拠はちゃんとあるから。これ現像して証拠写真として法廷に提出すれば、今請求する額の何倍もの値段がとれるんだけどニャ~」
こいつは本気だ。進藤よ、こいつの命令に従った方が身のためだと思うぞ。
「どのくらい…?」
「これぐらい」
工藤はまたまた懐から電卓を取り出し、カタカタうってから進藤に見せた。こちらからはよく見えないが、進藤が明らかに絶望の表情を浮かべている。
私は思わず合掌をしてしまった。
「分割でもいいよ」
「なら…分割で…」
「何回払い?」
「10回で…」
「了解了解♪♪」
音譜マークなどつけても可愛く見えないのは、私だけだろうか。
こうして御一行はぐだぐだな演劇をやりながら、下校時間を今か今かと待ち望んでいた。
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