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「さ、坂、きっつい…」
はぁ、はぁ、と息切れをしながら愛犬のジャックラッセル テリアの「ルック」と一緒に坂道を駆け上がる。
何、この辺の道…坂道が多過ぎる…！ルックと一緒に散歩に来る前に下調べしとくんだった。
私、深瀬 緑は昨日、新しいこの街に引っ越してきた。
理由はお母さんの病気……
お母さんは生まれつき心臓が弱くて、私を出産する時だって命懸けだったって聞いた。
だから、体も弱いからすぐ風邪をひくし、旅行も殆ど行った事ない。
ずっと仕方ないと思っていた。
お母さんの事は大好きだし、体調が悪いお母さんを見てるのは辛い。
だから、友達が家族旅行したりとかどっか遠くにお出かけしたって話を聞いても、羨ましいとは思わなかった。
……嘘。
ちょっとは羨ましいとは思ってたけど。
それでもお母さんが元気でいればもう、それで充分だと思ってた。
でも、それが変わったのは私が高校に入ってすぐの事。
小学生の頃から憧れていた私立の女子高。
制服はもう、それはそれはメチャクチャ可愛くて。
雑誌に制服の特集があれば必ず、1位を取っているくらい女子からは憧れの制服。
それに頭も上位の方にいなきゃ入れないほどレベルも高いし、通っている在校生の雰囲気もみんな穏やかで文句無し。
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