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きゅうっと胸が苦しくなるのを感じながらも、布施さんに伝えたい言葉はただ一つ。
「感謝、してます…布施さんには…
いつも、いつも助けてもらったから…」
ピタッと止まった布施さんの手。
私の次の言葉を待っているみたいに。
「私、布施さんが、いなかったら…きっと、ダメな時…
いっぱい、ありました…」
せっかく拭いてくれたのに、また涙は流れ出した。
でも、布施さんも涙にはもう触れてこなかった。
私の話を、ただ、ずっと聞いてくれていた。
「だから、本当に、感謝…してます。
私…私…」
もっと…
もっと、もっと、ちゃんと言葉にしてたくさん話をしたいのに、どうして次の言葉が出てこないんだろう。
私、本当にバカだ。
「……緑」
ただ、嗚咽だけ漏らして泣いている私に、布施さんが声をかけてくれた。
それも、聞いたことのないくらい優しい声で。
「さっきやった飴、貸せ」
飴…?
さっき貰ったパイン飴?
確か、スカートのポケットに入れたままだ。
ポケットからパイン飴を出すと、布施さんに渡した。
布施さんは受け取ると、袋を開け始めた。
「ほれ、あーん」
染み付いた条件反射。
開けた口の中には、パイン飴がはいっていった。
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