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口いっぱいに広がる甘酸っぱい味。
そういえば、初めて貰った飴もパイン飴だった。
「これで最後な」
「えっ…?」
最後?
オヤツをくれるのがって事?
布施さんの不思議な発言に、流れていた涙は少し引いた。
「次から寂しくなったら、深谷にキスでもしてもらえ」
「なっ、なぁっ…!!」
「しかも濃厚なヤツ」
「何ですか!それ!!」
くくく…っと意地悪な笑い。
残っていた涙は跡形もなく消えて、今は顔中に熱が広がっていた。
「それでいいんだよ」
私の涙で濡れたハンカチを強引にポケットに突っ込むと、ソファにゆっくり座り、残っていた水を飲み始めた。
「まっ、せいぜい大事にしてもらえよ?」
「布施さ…」
私の言葉を言い切る前に、またソファに横になり始めた。
私に背を向けて…だけど。
「…話は終わりだ。
俺、寝るから」
「あっ…」
「少ししたらまた行く。
だからお前も、もう行け」
「………わかり、ました…」
少しだけ…布施さんの細い背中を見届けた後、静かにその部屋を私は出た。
終わった…
お話。
終わったんだ…
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