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嫌な事…
それにはお母さんの布団に顔をうずめながら、横にブンブンと振った。
前に来た時の私なら、確実に泣きながら深谷君の事を話していたと思う。
でも、今は違う。
嫌な事なんか一つもない。
「だったら、嬉しい事?」
嬉しい…
嬉しい事。
その言葉には素直に頷いた。
でも、お母さんにはバレバレで。
「何かややこしいことがあったのね?」
って、笑いながら言われた。
それには、うんって、頷いた。
「そっか、緑ちゃんもそんな事で悩むお年頃になったのね」
何も言っていないのに、なんでわかるんだろう?
母親の勘?
お母さんから離れて椅子に座ると、お母さんは点滴をつけたままゆっくり起き上がり、私の方に向いた。
「ねぇ、緑ちゃん。
緑ちゃんはいつでも我慢する子だから、お母さんはあえて何も聞かないけれど…
一つだけ、言わせてね」
「…何?お母さん…」
「どんな事でもね、時間っていうものがきっと解決してくれるから」
「時間…」
「そう、時間。
今は例えどんなに傷ついたとしても、きっと時間が傷を癒してくれる。
いつかまた、笑い合える日がくるわよ」
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