第1章

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彼女と出会ったのは、高校を卒業した年の春だ。 就職を選んだ俺は、入職直前の説明を受けに事業所に来ていた。 「面接の時も思ったけど、18歳で介護やろうなんて偉いよね」 「俺、おじいちゃんおばあちゃんと話すの好きなんで」 「そっか。それなら大丈夫そうだね」 俺が配属される部署の担当者である一之瀬昴さんは、ほっとしたように笑った。 それから、簡単に1日の業務内容を教えてもらう。 「……とまあ説明はこんなところかな。何か分からない事ある?」 「現場に入ってみないと何とも言えないですね」 「それもそっか。じゃあ後でフロア覗いてみようか」 そんな話をしていると、コンコンとノック音がした。 どうぞ、と一之瀬さんが返事をすると同時に引き戸が開く。 入ってきたのは俺より少し年上くらいの女性だった。 「主任ー。外線だそうでーす」 眉間にシワを寄せて不機嫌丸出しだ。
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