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『どしたの、ずぶ濡れ…僕とお揃い。急に降ってきたから来たの?』
入りなよ、そう言われて一歩中に足を踏み入れればバサリとタオルケットを掛けられた。
『拭いて。風邪引いたらどうするつもり』
ふっと笑う、珍しい彼女の笑みを見て…ついに糸が切れたように、その体に飛び付いた。
『…僕も濡れたからお風呂入ったんだ。抱き締めたらまた濡れるよ』
『…っいい!! いいよ…気にしないから、ごめん。もう少し…このままで居させて、有阿…』
濡れた髪から溢れ落ちる雫が頭に落ち、額…頬へと伝い落ちる。
年下の、しかも妹に泣き付く情けない俺だけど…有阿は微動だにすることなく、俺の惨めな泣き声をずっと…聞いていた。
ごめんね、でも…ありがとうっ…。
『僕は、兄ちゃんがそれで良いなら別に…恋人が二十歳年下でも、凄い年上の女性でも、例え…男性でも構わない。
…でも、そんなに泣くほど悲しませるなんて僕の目も衰えたもんだね』
引き摺られるようにリビングに連れられ、ゴシゴシと乱暴に涙を拭われたかと思えば温かいお絞りをあてられた。
じんわりしたお絞りで、また泣き出したら有阿は怒ったのか新しいお絞りを俺の顔に投げ付けてきた。
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