17人が本棚に入れています
本棚に追加
『…ほら、擦らない。こっち向いて』
顎を掴まれ、強引に上を向かされれば…視界に入ったのは、眉を潜めた有阿の姿。肩に掛かったタオルを取り、再び俺の涙を優しく拭ってくれた。
『ご、ごめんね有阿…』
『…別に』
カーテンを開け、もう雨は止み暗くなった空。
星が…好きな有阿。
『…今、沢山泣いたら良い。思い出す度に泣く兄ちゃんを見るくらいなら、今日…一度に泣かれた方がマシ。
まぁ…今どんなに泣こうと、兄ちゃんのことだからまた泣いちゃうんだろうけど』
タオルが足りなくなりそうだね。
そう言って振り向いた有阿は、悪戯っ子のように笑っていた。後ろにある夜空と有阿は、何とも絵になっていて…どこか幻想的。
気付けば、俺の涙はいつの間にか止まっていた。
『さて、どうせ何も食べてないんだよね。ご飯にしようか』
手を取られ、有阿に引っ張られながら歩いた。
妹の背中が…とても
とても力強いものに見えた俺は、その日初めて
笑った。
.
最初のコメントを投稿しよう!