1.ボールと窓ガラス

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「……くそっ」  イライラをぶつけるように強く蹴る。足元に広がる茶色い地面を。削った箇所だけ色濃く変化していた。 「あ~あ…」  運動場だというのに辺りには誰もいない。春休み中の子供も、スポーツに興じる大人達も。はしゃぎ声はどこからも聞こえてこなかった。 「オラッ、オラッ」  無人の空間を確かめると何度も足を動かす。気分が高まって妙なテンションになっていたので。しかし靴の中に砂が侵入してきた事で中断。ストレス解消で始めた行為により更にストレスを募らせてしまった。 「ちっ…」  スニーカーを脱いで異物を取り出す。靴下を汚してきた憎き敵を。  やればやる程上手くいかない。なぜ失敗はまた別の失敗を生み出してしまうのか不思議でならなかった。 「……ん」  視線を足元に移すとアイテムを見つける。握るには手頃な小石を。屈んで手に取った。
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