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そう反論しつつ、俺のことをチラ見してくる。おいおい何だよ。何も出てこないぞ。
「とにかく! 私はツインテールなの!」
橋倉の提案を当たり前のように拒否しながら自分のプライドを主張する真田。
スゲー気迫。距離も近いな。そのままキスしちゃえよ。お似合いだぞ。
「通も何か言ってよー」
俺を頼るな。それと、そんな子犬みたいに瞳をうるうるさせてもダサいだけだぞ。ともかくだ。
「真田がその髪型が似合うよ。それが似合うと思ってて、お気に入りなんだろ。だったらそのままでいいじゃないか」
それが普通ってことだろ。いつも結うの大変そうだがな。
「と、とお、とぉ……る。さ、さっきのって、本当?」
「さっきって何時だよ」
多分髪型だろうな。まあ、真田にとっての普通がツインテールなんだろ。それを否定したら真田を否定することと同じじゃないのか?
「さっきは、さっきよ!」
こいつ言わないつもりだな。ちょっと弄ってやろうか。
「へー。具体的に言ってくれないと分からないなー」
「うっ……。か、か、髪型……の……ことよ」
おお! やけに素直だな。いつもなら照れ隠しするのに!
「な、なによ……」
びっくりして言葉が出ない。そんな俺を心配してくる真田。
こんなの普通じゃない。普通な真田に戻ってくれ!
「だ、だって、それが真田の普通なヘアースタイル何だろ。今さら変えるなんてもったいない」
自分らしい言葉が咄嗟に出た。慌てていたから自分らしいとは言い難いところもあるが……。
すると、真田は突然表情を変えた。凄い唖然とした顔だ。
「へ、へー。そこなんだ……」
「あーあ。通はやっぱりいつも通りの感じだね」
意味がわからん! ともかく、こんな空気嫌だ! 普段の雰囲気とは全然違うぞ。
「ともかく、帰ろう。ここでグダグダするのはあまり好きではない。家でまったりするほうが好きだ」
「恋愛は?」
考えたことないな。
「結婚は?」
現実味がないし、できるかもわからんからな。
「将来は?」
「普通で平凡なるサラリーマンかな。どこかの中小企業。まあCMがちょくちょくやるぐらいなレベルの企業に就職して、その場その場で考えるさ」
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