代名詞とか、愚図でいいんじゃないの。

37/37
前へ
/37ページ
次へ
   思わず操に手を上げそうになって──それをグラスに代わってもらっただけだ。 「……きじま……」  許しを請うような、操の瞳。  ……馬鹿じゃないの、俺。  こんな女に、何を期待してたんだろうか。  言っていいことと悪いことの区別も、していいことと悪いことの区別もつかないような、こんな女に──……。 「大丈夫ですか」  グラスが割れた音を聞きつけた黒服が、すぐに片付けにやってきた。  俺は顔なじみのその黒服に張り付けた笑顔を向けて謝り、美智子さんによろしく言っといて、と金だけ置いてその場から離れた。  あのままいたら、ブチ切れて店の中で何をするか判らなかった。  あの店は気に入っているし、これからも通うんだ。  美智子さんとの関係を悪くしたくない。 .
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加