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思わず操に手を上げそうになって──それをグラスに代わってもらっただけだ。
「……きじま……」
許しを請うような、操の瞳。
……馬鹿じゃないの、俺。
こんな女に、何を期待してたんだろうか。
言っていいことと悪いことの区別も、していいことと悪いことの区別もつかないような、こんな女に──……。
「大丈夫ですか」
グラスが割れた音を聞きつけた黒服が、すぐに片付けにやってきた。
俺は顔なじみのその黒服に張り付けた笑顔を向けて謝り、美智子さんによろしく言っといて、と金だけ置いてその場から離れた。
あのままいたら、ブチ切れて店の中で何をするか判らなかった。
あの店は気に入っているし、これからも通うんだ。
美智子さんとの関係を悪くしたくない。
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