プロローグ

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放課後の図書室。 穏やかな静けさ。 遠くから喧騒が聞こえるけど、ここは別世界みたいだ。 かすかな空調の音が聞こえるくらい。 独特の本の匂いの中、背の高い本棚の間をかいくぐり、今日借りていく本を探す。 この時間が何よりも好き。 金曜日の放課後。 私はいつも1人で図書室にやって来て、数冊の本を借りて帰る。 この日は、普段一緒にいる友達とも別行動。 それがまた気楽でいい。 別に友達のことが嫌いなわけじゃない。 だけど、ときどき息苦しく感じてしまって こうして1人になると、ホッとするのも事実だ。 (…今日は何を借りようかな) ――キュッ…キュッ… 私の上履きの音が耳に響く。 ああ… こうして本棚に囲まれていると、誰の姿も見えなくて、世界に1人きりみたいね。
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