プロローグ

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この人…図書委員だ。 金曜日は、この人と、真っ直ぐな黒髪の大人しそうな女の人が担当らしく、私が行くといつもカウンターに座っている。 確信はないけど雰囲気からいって3年生じゃないかな、…と思う。 つまり、私より1つ年上。 「あ…りがとう…ございます」 お礼を言いながら本を受けとった。 その瞬間、ほんの少し指先が触れあってドキリとする。 彼は、そんな私の心中など察するはずもなく、ニコニコ笑っていた。 「…その作家、好き?」 「え…」 「好き?」 「……好き…です」 「おれも好き。面白いよね、その人の話」 「…は…はい…」 どうやら人見知りとは全く無縁のタイプみたい。 初めて会話を交わすはずなのに、とても親しげに接してくる。 うう…、どう答えればいいの。 「……………」 私の戸惑いが伝わったのか、彼はちょっとだけ首を傾げてから『借りるならカウンターに来てね』と言い、アッサリ去っていった。 (…私の態度、感じ悪かったかな…) もっと、親しく受け答えした方がよかったのだろうか。 (いやいや、…そんなの無理だし) 内気とまではいかないけど、あまり積極的なタイプではない私。 面白い話やリアクションも出来ないし。 どうせ、こんなものだもん。
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