プロローグ

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それから図書室内をぐるりと回って、数冊の本を見繕った。 これだけあれば来週までもつよね。 借りるためにカウンターへ向かうと、さっきの人は既に戻ってきていて、いつもの位置に座っている。 隣に座る、これまたいつも通りの黒髪の女の子と、小声で楽しそうに話していた。 ずいぶん仲良さげ。 そういえば金曜日はこのペアばっかりだし。 友達同士なのかな。 もしかしたら付き合ってたりして。 …だとしても、私には関係ないけど。 ほんの少しの照れ臭さと気まずさを感じながら、カウンターへ。 彼はすぐに私に気づき、笑いかけてきた。 「…貸し出し?」 「はい」 「図書カードお願いします」 「…はい」 借りる本と一緒に、個人カードを差し出す。 彼は慣れた手つきで、私のカードを見ながら、本についてる貸し出しカードに日付と私の名前を記入していった。 その手が、おもむろに止まる。 「…しんじゅ?」 「え?」 「君の名前。…実は前から気になってたんだー。 ほしはら…しんじゅ、って読むの? それとも、まじゅ?」 「……しんじゅ…です」 星原 真珠(ホシハラ・シンジュ)。 それが私の名前。 …あまり気に入っていない。 「ふーん。…綺麗な名前だね」 「…ありがとうございます」 彼からの無難な誉め言葉に、内心白けた気持ちになる。 名前“は”、綺麗。 名前を誉められるたび、そう言われている気分になる。
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