プロローグ

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「あ、…もしかして、6月生まれ?」 彼は、私の冷めた気持ちも知らず、楽しそうに尚も話しかけてくる。 どうやら名前の由来が気になるみたいだ。 「…違います。4月です。 春生まれで、…親が星が好きだから。 だから真珠です」 私はわざとそんな風に答える。 これで由来がわかる人なんて、今までいなかった。 我ながら意地悪な答え方だと思う。 でも丁寧に説明する気になれない。 彼の無邪気な態度が、妙に無神経に見えてイライラしていたから。 早く会話を終わらせたかった。 なのに… 「ふーん。 じゃあ、…スピカだ」 「…え」 「あれ。違う? 乙女座の一等星。別名“真珠星”。 そこからじゃないの」 「…違わないです」 「やったね。…正解」 彼が嬉しそうにピースサインを作る。 すると、今まで黙って私たちのやり取りを聞いていた黒髪の彼女がクスリと笑った。 「…松田くん。良かったね」 可愛らしい声。笑い方。 そんな黒髪少女の様子に、笑いかけられた彼…『松田くん』は、それまでとは違う、ほんわかとした幸せそうな表情を見せた。 柔らかい雰囲気。 やっぱり、2人は恋人なのだろうか。
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