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そうか、俺の部屋に上がり込んだのは最後のあがきだったのか。
それをさせたのは自分かも知れないと考えないわけではなかったが、だからと言って唯に対するぬるぬるとあったかい気持ちが戻ってくるわけでもない。
彼女が俺の都合や気持ちよりも、自分のしたいことを優先した。
もうそれが答えだ。
何があっても許して受け入れてやれるような、親みたいな愛情を俺は唯に対して持ち合わせてはいない。
男と女の間に生まれるものなんて、そのくらい不安定なものだ。
だからこそうっかり失ってしまわないように、大事にするわけで。
俺は俺なりに、唯を大事にしていた。
気持ちもあった。でも。
唯がそれをよしとしないのなら──不満だと言おうものなら、俺の想いなんてその程度だ。
相手に伝わらない、理解されないようなそんなもの、何の意味もない。
自分の中にうっすらと残っていた唯への気持ちと未練が、さらさらと砂のように崩れていくのが判った。
俺はそれを追いかけてかき集めることもせず、ただ黙って見ているしかなかった。
押し流していくその風は唯から吹いているんだと思うから。
だったら彼女の意のままに。そんでいい。
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