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「木島さんこそ、私だけだったって言えますか」
「さーね。どうでもいいよ、もう」
「ひどい……」
「ひどいのはどっちだよ。あ、鍵返してね」
「……ひどい……」
「は。何勘ぐってるか知らないけど。
それ持ってるの、お前だけだから。
他人が俺の城の鍵持ってるとか、
気持ち悪いから返して」
「……!」
黙ったまま動かない唯を振り返り、しれっとして手を差し出す。
鍵を返せ、という意味で。
唯は口唇を噛み締めると、スカートのポケットからチャリ……と鍵を取り出した。
俺が渡したときは鍵だけだったけど、なんかかわいいチャームがぶら下がっている。
唯ははらはらと涙を零しながら、ゆっくりと足を進める。
そうして、震える手で俺の手に鍵を乗せた。
俺は黙って鍵からチャームを取り外すと、それを唯の胸元にポンと投げて返した。
唯はそれを受け取ると、「ああ……」と声を出して泣き崩れる。
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