第3話

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街路樹にも電柱にも看板にも…… 至る所に施された白い電飾は、まるで辺りを覆い尽くすように降り積もる雪のようだった。 イルミネーションに全く興味が無かった筈の私も外に出て数分後にはその白く輝く世界に夢中で視線を彷徨わせていた。 10分程歩いた所で 「ちょっと休憩していこうぜ」 蓮さんが足を止めた。 その声に現実に引き戻された私は 「休憩?」 蓮さんの顔を見上げた。 「身体が冷えただろ?なんか温かい飲み物でも……」 「まだ見たい」 「ん?」 「イルミネーション」 自分でも子どもみたいだと思った。 あんなに外に行きたくないと駄々をこねたにも関わらず、こんなことを言って……。 だけど、そんな事を気にするよりも、ただ素直にもっとこの光の世界を見ていたいと思った。 「心配しなくても、あそこからならちゃんと見える」 「え?」 蓮さんが指差したのは駅前にあるカフェだった。 私も何度か訪れたことのあるこのカフェは駅側に面した壁一面がガラス貼りになっていて駅前の広場が一望できる造りになっている。 「イルミネーションのメインは駅前の広場だ」 蓮さんのその一言に私がカフェに行くことを速攻で了承したのはいうまでもない。
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