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『ピピーーーーーーーッ』
体育館に無常に響く、試合終了を告げるホイッスル。
「負けた......?」
結果は3点という僅差での敗北。
それも試合終了1秒前に放たれた3ポイントシュートがゴールに吸い込まれた。
ブザービーター
決めたのは俺よりも小さなポイントガード。
表情一つ変ず、頭の後ろにも目があるんじゃないか?ってなくらい周囲が見えていて、彼の出すパスは必ず得点につながっていた。
長身の選手を集めた俺たちのチームは「攻撃は最大の防御なり」を地でいくようなパワーで押していくプレースタイル。
比較的「小柄」という印象を受けるその少数精鋭のチームは、ポイントガードの策士を中心とした緻密な作戦に基づくプレーを仕掛けてくる。
第一印象とは裏腹に、チームの中でも一番小さなその選手は今大会の3ポイントの得点率ナンバー1を誇っていた。
とにかく機敏な動きと、どこからパスが出るのかわからないという脅威、そして外からでもシュートを決めることができる彼は相手を翻弄し続けた。
初めて対戦して、ものの5分もしないうちに、レベルの差を見せ付けられた。
多少なりとも注目されていた俺たちは、その鼻っ柱をみごとに折られた。
俺は悔しいというよりもむしろその選手から目が離せなくなっていた。
その後、その選手が今大会の得点王に輝いたことを知った。
名前は桂月中の更科葉月。
今大会1番のダークホースだった。
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