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全国大会常連校であるうちの学校――泉美学園中等部――があろうことか、関東ブロック大会での敗北。
全国大会で桂月中は初出場にしてベスト4という成績を残した。
その後大会で目にするたび、その蝶が舞うような軽やかなステップから繰り出されるドリブル、空いたスペースを逃さずに切り込んでくるパス、そして圧巻なのは3ポイントシュート。
ぱっと見はその辺の女共に負けないキレイなルックス。
ボールを手にした途端、その茶色の瞳はただゴールだけを狙っている。
その小さな体でキレのある動き。
目にもとまらぬ速さでコート内をところ狭しと駆け抜けていく。
馬鹿みたいに俺の目は釘付けになっていた。
―――上手くなりたい!彼みたいに!!
いつしか、更科葉月に肩を並べたいという思いと憧れが、練習嫌いで才能だけでプライドの塊だった俺を誰よりもバスケにのめり込ませ、寝ても覚めてもバスケット命の男へと変貌させた。
『中学最後は全国優勝で!』
を合言葉に、打倒桂月中・打倒更科葉月とした俺たちはその年、あっさりと全国大会優勝を果たしてしまった。
ナゼダ......?
その年桂月中は関東ブロック大会で決勝リーグにすら現れないままあっさりと敗退していた。
そしてその年は更科葉月の姿を見ることはなかった。
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