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「なんかさぁかったりーよな......」
入学式の朝、不満いっぱいにぼやく俺の隣で、真田は苦笑する。
明らかに不機嫌全開の表情を浮かべる渚。
「渚、お前な~おめでたい日なんだから、んな景気悪い顔すんなよ!!」
「ぅるせぇな~どんか顔しようと俺の勝手だろ?」
受付で先輩に名前を告げ、何の気なしにクラス名簿を見た瞬間俺は固まった。
更科柚樹......
(えっ!?更科って!?)
更科という字に衝撃を受けた俺は暫く動けなかった。
動揺しているのか、動悸がする。
もう一度その名前を確認しようとしたが、事務的な流れ作業で行われる手続き。
後から来た奴に怪訝な顔をされその場から離れざるをえなかった。
「どうした渚?」
隣を歩いていたはずのその姿が消え、振り返ると受付を向いて渚が固まっていた。
「おぃ?どうした?」
「いた......」
消え入りそうな小さな声、その表情は強張っている。
「は?」
「あったんだよ!!更科って名前が!!」
「更科......ってあの桂月中の更科か?」
「......多分」
「多分て、お前なぁ......」
「だってっ!!名簿に名前があったんだよ!!泉美に来てるんだ......やべぇ、俺ど~しょ!?」
明らかに同様の色を隠せない俺は?式の間中も落ち着かず、ソワソワしていた。
(俺は夢を見ているんだろうか......!?)
憧れだった更科葉月と同じ学校に入学し、あろうことか同じクラスになろうとは......
夢じゃないか!?と自分自身、今置かれている状況が信じられないでいた。
思わず何度もほっぺたを抓ってみた。
式が終わり、教室でその姿を待っていた。
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