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その時は突然訪れた。
教室に入ってきたその人は、初めて会った時の印象よりは若干大人びて見えた。
動悸がする......胸が苦しい......憧れのアノ人が今目の前にいる。
その事実が信じられず、その人の一挙一動から目が離せない。
俺の3つ前――真ん中の一番前の席に座り、なんだか落ち着かない様子でいる。
いきなり後ろを振り返りキョロキョロしている。
(な、あいつ可愛くねぇ?)
(スポーツクラスだからむさ苦しい野郎ばっかかと思ってたけど、華だな......)
それもそのはず。
その姿は砂漠のオアシスのごとくキラキラと輝いて見えた。
色素の薄そうな茶色いベリーショートの髪の毛先はワックスで無造作に遊ばせている。
茶色い瞳の綺麗な横顔。
一言で言ったら美人とか可愛いとかじゃ形容できない可憐な姿に教室のあちこちでため息が聞こえた。
突然、席を立ち一番後ろの席の奴の所へ向かった。
(あいつ......なんで若菜!?)
あろうことかじゃれ合っている。
若菜も俺も真田も、高等部のほとんどは下からのエスカレーターであるため、みんな顔見知りだ。
同じクラスにはなったことないけど、野球部の若菜は中等部でも人気者だった。
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