第一章

2/7
前へ
/7ページ
次へ
ーー数年前、アフガニスタンーー ・・・・・・あの時。 今でこそ特殊な個性に満ち溢れていて毎日を怠惰に過ごし、苦労と言えば妹みたいな幼馴染がしょっちゅう家のドアを壊す事くらいしかない俺であるが、あの時はまだ真面目で苦労の絶えないちっぽけなガキだったよ。 ガキの苦労なんざ高が知れてる。 恋愛だの、友達関係だの、受験だの・・・・・・まぁ色々あるだろうが、そんなとこだ。 毎日生きるか死ぬかの境界線で駆けずり回りながら相手を「向こう側」のラインへ押しやったり、少ない食料で空腹に喘いだり、訳のわからない病気に苦しんだり・・・・・・ そんなクソみたいな事に比べれば他のガキの悩みなんざ幸せに思えるさ。 朝、当然のように朝日に照らされて起きる事すら厳しい世界がある。 夜中に迫撃砲が降ってきてそのまま永眠したり、はたまたラジコンみたいな飛行機から急にミサイルが飛んできて粉微塵になったりする世界だ。 ーー俺は確かに、その世界にいた。 自分を見つめ直す良い機会なのかもしれない。 俺がこっちに来る前、何をして、どうやって生きていたか。 書き記したいと思う。 どこから書くべきか。 やはり最初から書いた方がいいだろうか。 ならいいだろう。 あれは、俺が家族とトルコへ旅行に行った時の話だった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加