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柏木くんを探して走り回る。
裏庭で柏木くんを見つけると私は柏木くんの手を掴んだ。
驚いて振り向く柏木くん。
「湯川さん?」
「柏木くん!!」
息を整えてからゆっくり深呼吸をする。
そして真っ直ぐ柏木くんを見つめると口を開いた。
「私、美凰くんともう一度付き合う事にしたの」
そう言うと柏木くんは目を見開いて、少し寂しそうに笑った。
「そっか……。良かったね、湯川さん」
胸がズキっと痛む。
美凰くんはいつもこんな気持ちを感じてたのかな。
女の子に告白されて、断る時。
それなのに悪い事言っちゃったな。
私は唇を噛み締めて頭を下げた。
「いっぱい迷惑かけたし、いっぱい柏木くんの優しさに甘えた!こうやって謝っても許してもらえるとは思えないけど、謝らせて下さい!!」
「湯川さん」
「ごめんなさい!!」
「湯川さんってば」
柏木くんが私の顔を上げる。
柏木くんは優しく笑っていた。
「俺、怒ってないよ?」
「え……?」
「湯川さんはずっと吉田の事見てたし、こうなるって分かってた」
「……っ」
「だって、好きな人の悲しむ顔なんて見たくないでしょ?だから湯川さんは吉田の為に頑張ったんでしょ?」
「柏木くん……っ」
「だったらそれでいい。俺は湯川さんの一番の味方でいたいんだ」
柏木くんが私の涙を拭ってくれる。
「だから泣かないで。君が幸せそうにしてくれたらそれでいいんだから」
こんな素敵な人を私は振るんだ。
散々振り回して、嫌われてもいいのに。
「いい人すぎるよ、柏木くんーっ」
そうやって泣く私の頭を撫でる柏木くん。
すると後ろから誰かが歩いてきた。
「ほら、湯川さん。湯川さんが傍にいるべきなのは俺じゃないでしょ?」
柏木くんのその言葉と同時に後ろから抱き締められる。
懐かしい、安心する匂い。
「美凰くん……っ」
「ごめん、柏木。俺もう波那の事離さないから」
「うん。そうして。じゃないといつまでも湯川さんの事恋愛対象として見ちゃうからさ」
「王子の面被った狼だな、お前」
ふっと笑うと美凰くんは私の手を引っ張った。
「ありがとう」
美凰くんのその言葉に、柏木くんが少しだけ笑った気がした。
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