九牛の一毛【きゅうぎゅうのいちもう】

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俺の名前は柿本清志(かきもと きよし)。 強豪絆愛高等学校剣道部の二年生部員だ。 部員には同じ二年で生徒会副会長の藍原慎之助(あいはら しんのすけ)や、三年には濱田先輩と猛者が揃っている。 【※このへんは『嗚呼、絆愛高等学校』で詳しくやっとります】 藍原にだって濱田先輩にだって、それぞれ“恋人”と呼ぶべき相手がいて、楽しく充実した絵に描いたようなハイスクールライフを堪能している。 かなり…超かなり羨ましい… そりゃあ俺にだって、秘かに心に思う相手が実はいる。 去年、入学してすぐの頃… 部活へと急ぐ俺は、ちょうど角を曲がってきたその人とぶつかった。 「悪い…大丈夫か?」 その人は勢いよく俺とぶつかったはずなのにビクともせず、逆にひっくり返った俺に優しく手を伸ばし引き起こしてくれた。 「柿本、またハデにぶつかったな」 その人の後ろから濱田先輩が顔を出す。 「濱田知ってるのか?」 「ウチ(剣道部)の後輩、柿本だ」 「そうか…えっと柿本、怪我はなかったか?」 「は…はい」 俺は体格が飛び抜けて大きいわけではないが小さいタイプではないし、この人よりは大きい。 なのに、その俺が走ってぶつかったって言うのに… (なんて見かけによらず逞しいんだ…) 「俺は小暮。柔道部だから、また出会ったらよろしくな」 「は、はいっ!よろしくお願いします」 思春期のラブストーリーは、ベタに突然始まるのだ。 (ちょ…マジでイカス…小暮先輩…) 去っていく広い背中をガン見しながら、俺のハートにcatch fire。 しかしその時、視界がピンク色の俺には目に入っていなかった。 悪魔のジャンガリアンが居たことを…
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