九牛の一毛【きゅうぎゅうのいちもう】

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尾行⇒待ち伏せ⇒偶然を装い体育会系らしく爽やかに挨拶⇒筋肉talk花盛り あっという間に二人の垣根は取り払われ、小暮先輩との距離は縮まっていく。 俺のplanは完璧だった。 そのうち、色んな余裕が出てきた俺は、視界の隅に“ある”存在に気づいた。 小柄で大きな目に童顔、可愛い系だと言われれば可愛いのかもしれない。 (昔飼ってたジャンガリアンハムスターに似てるけど…所詮、小暮先輩以外はbe not aware ofだぜい) 濱田先輩情報によると『同室』ってことだし…『ただのジャンガリアン男』なんて完全スルーしていた。 だが…一度気づくと、部活以外の小暮先輩のまわりに頻繁に出没している。 そして、あの日――― 窓から見える校庭の片隅で、小暮先輩が体育の授業で見事な“褌まわり”を披露した直後、あのジャンガリアンはよりによって一番高い鉄棒で体操選手顔負けの技を披露しやがった。 「いいぞぉ!ミクゥ~最高♪」 小暮先輩の声なら1㌔先だって聞き分けられる自信がある。 「“ミク”だとおぉぉ~」 まさかの、昔飼ってたハムスターの名前と一緒!(※本名は未来“ミライ”) クルクルと大車輪をし、手を離すと宙返りしながら着地。 小暮先輩は嬉しそうに抱きついている。 「ぐぬぬぅぅ~…おのれぇ…悪魔のジャンガリアンめぇ!貴様など一生回っておればいいものおぉぉ~」 悔しさがこみ上げ、ギリギリと奥歯を噛み締める。 「先生!柿本が血走った目で、口から血を吐いてます」 「思春期にはよくあることだ。ほっておけ。次、『四十八手から見る接近戦と小粋な小技』の章、おまえ読め」 まわりの声など耳に入らない。 俺の視力は小暮先輩限定で6.0はあるはず。 あの小暮先輩の目は… ジャンガリアンに惑わされている目。 俺のHeartはあっけなくbreakなのか? 「NOぉぉ~!!」 机に激しく頭突きをかましたって、この不安は拭えない。 何度ぶつけても一緒だ。 「せ…先生…」 「思春期にはよくある衝動だ。血が出ていないようならほっておけ」
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