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「どうぞ……」
「…ありがとう
お邪魔します」
課長がいなくなってあの場に二人きりになり気まずいまま時間だけが過ぎた
「話を聞いて欲しい……」
そう言った佑の顔は初めて見る知らない人のようで少し驚いた
でも、その顔を見て何故か私は冷静になれたような気がする
出来れば今日は佑の顔を見るのも佑の声を聞くのも嫌だった
考えたくなくて目をギュッと瞑れば、あの瞬間の光景が容赦なく私に襲いかかる
さっきまで課長と一緒に居たことなんてまるで夢を見ていたかのような気にさえ思えてくる
課長の家、きれいだったな
課長の作ってくれたシチュー、美味しかったな
課長、片思いしてるんだよな
まるでさっきまでのことが現実だったという事実を確認するように心の中で呟く
よし 大丈夫!
遅かれ早かれ結末はやってくるのだから、それなら一気にダメージを受けてしまおう
這い上がれないくらいのどん底へ堕ちれば後はゆっくりでもいいから上がってくるだけ
きっと佑にだって言い分はあるんだ
私への不満もきっとたくさんあるんだろう
私が気づかずにいただけで、もしかしたら佑を苦しめていたのかもしれない
佑の気持ち、わかってなかったのは私の方なのかも
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