第3話

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バタン ドアが閉まり佑が出て行った 私はドアに背を預けて遠ざかっていく佑の足音を静かに聞いていた 深夜のせいかよく聞こえる いつもなら規則正しいリズムで割と早歩きの癖のある佑の歩調… でも今はゆっくりと一歩一歩がとても頼りなく聞こえる 明るく優しく頼りがいがあり、いつもいつも私を楽しませてくれてた佑のあんな寂しそうな顔見たのは初めてだった… 私だってこの先もずっと佑と一緒にいたいと思ってた 私が佑を許せることが出来たら、また元の二人に戻れるの? ……いや、きっと戻れない 今日見た佑を私の記憶から消す事は出来ないよ 消せるものなら消してしまいたい でもどんなに頑張っても消えてくるない 佑を見るたびにきっと思い出す 思い出しては心の中で何度も何度も佑を責めてしまうだろう だから……もう無理なんだ 時間は解決してくれない 佑、ごめんね 私には無理 そんな器は持っていないよ エレベーターではなく階段をコツコツ下りていく音が聞こえる しばらくして足音は完全に聞こえなくなった 私は力が入らず玄関でしゃがみ込み、膝をかかえて身体を丸める 今まで我慢していた涙がどんどん溢れてきて、私は声を殺して泣いた  
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