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彼女は白い塊をひとつ、つまみあげた。
これなあに?
カイコの繭だよ
カイコ、虫さん?
彼女の細い指の間で、それは柔らかな光を帯びていた。
君の着てる服、その繭でできてるんだよ
彼女の目は、ドレスの胸元から白い繭へと移った。大きな目でしげしげと見つめていた。
わたしにも翅が生えてくるかしら
彼女は無邪気に笑った。僕は何も答えなかった。
2
彼女は来週、白いドレスを着るのだそうだ。
頭に華とレェスをつけて、白い手袋をはめるのだそうだ。
僕の手の中に、小さな小さな塊があった。
それは丸くて柔らかくて温かかった。
これを身に纏うとき、彼女はどんな風に笑うのだろうか。
彼女の見納めに、僕はどんな涙を流すのだろうか。
透明な嬉しさではないことは確かだ。
きっと赤くて黒くてはい色に違いない。
そして僕の中の彼女は微笑み、
微笑みながら死んでいくのだ。
白くて温かな繭に包まれ、僕の知らない喜びの中で、
僕の知らない人になるのだ。
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