第1章 魔王就任と勇者

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「あ~…暇だなぁ……」 大変不本意な就任式から早7日。 俺は年代物の豪華でずっしりとした椅子に腰掛けて大きく伸びをしていた。 「暇な事などありません陛下!魔王としてやらなければいけない事は山のようにありますのに、いつも逃げてしまわれるのは陛下ではありませんか!」 あー…… うっさいのキた。 直ぐ側にやって来たこの男は、先代の魔王の側近だったらしい。 名前はキイル。 長い薄青色の髪を振り乱しながらまくし立てる姿は、元来のイケメン顔が台無しで非常に残念。 「……キイル、そんな事を言っても陛下も即位されて間もない。それに今までとはまるで違う環境に戸惑っておられるのだろう」 俺がキイルの話を9割程聞き流しながらぼーっと部屋を眺めていると、これまたイケメンが俺の仲裁にはいる。 ここ数日で見慣れたやり取りだ。 勿論俺は戸惑っている以前に、やる気がないだけだ。 「それまでは私達がお手伝い差し上げれば済む事だし、陛下はきっと素晴らしい魔王になられる」 半分陶酔したように語るコイツ。 何と先代魔王の一人息子だと。 どうせならコイツが魔王になればいい。そう俺は思ったし、魔王が死ぬまではコイツも周りもそうなるだろうと思っていたらしい。 しかし、だ。 魔王の代替わりは少しばかり厄介で、先代が死んで始めて『魔王の証』である痣が次代に浮かび上がる。 そう、何故かありがたーい?証が俺の額に現れちまったわけだ。 これを決めるのも、先代魔王。 死ぬ前までに後任を心に決めて、死ぬと何故かそうなるらしい。 何故俺だ。 肖像画見たぞ。 見たことないオッサンだった。 もう一回言うぞ。 何故俺なんだ? 見ず知らずの俺に証を残しやがったオッサンは、死ぬ直前まで周りには何も言わなかったらしい。 もちろん、側近のキイルや、息子の……あー……ガイ。 そうそう。息子のガイにまでだ。 父親の死後、悲しみながらも新たな魔王として人力しようと決意するが、待てども待てども痣が出なかったらしい。 (俺に出てンだからそれも当然だ) 正直同情する。
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