第2話

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 翌日、僕は作戦を変更した。  やはり小学校一年生の天才を大人が理解することは不可能であり、それはむしろこれまでの僕の人生は間違いではなかったことの証明である。僕はいつでも正しい。なぜならば天才だから。  僕の正しさを認めてくれる大人に協力を依頼すればいいのだ。そこで僕が選んだのは学校の先生である。親では駄目だ。なぜならば僕が天才であることを親が周囲に広めたとしよう、親バカと周囲に思われるだけだ。  丁度、今日は算数の授業がある。そして数のお稽古という天才を愚弄する授業は前回で終わり、今回は足し算である。  きっと先生は1+1を始めにやる。勿論、答えは2だ。1+1が3にも4にもなるという精神論はこの場合必要ではない。答えは2だ。  そしてこれまでの先生の行動パターンから、何故そうなったかを皆に尋ねる。僕の狙いはそこだ。  僕はこう答える。 ※小学生では解けない証明なので、サクッと次のページに進むことをオススメします。 「0と自然数の集合をMとする。 1、0はMの元である。 2、nがMの任意の元であれば、その後継(successor)と呼ばれるsnc(n)がだた1つMに存在する。 3、後継が0になるような元はMに存在しない。 4、Mの任意の元mとnに対して、m≠nならば、suc(m)≠suc(n) 5、Mの部分集合Aが0を含み、nを含めば、suc(n)も含むとき、A=Mである。 そこで、証明するための準備として 公理には定数記号が0しか明記されていないので、定数記号を下記のように定義する。 1=suc(0) 2=suc(suc(0)) 3=suc(suc(suc(0)))…… 公理5よりMにおいて、加法が下記のように定義出来る。 定義1 Mの任意に元aに対して、a+0=0+a=a つまり、0を加法に関する単位元とする。 定義2 suc(a)+b=a+suc(b)=suc(a+b) 上記のようにMにおいて、加法を定義すると、Mの任意の元aの後継はa+1になる。 何故ならば、定義1より、suc(a)=suc(a+0)、定義2より、suc(a+0)=a+suc(0)=a+1 したがって、suc(a)=a+1……Ⅰ そこで、「1+1=2」の証明 Ⅰにおいて、a=1とすると、suc(1)=1+1これを① 1=suc(0)であるから、suc(1)=suc(suc(0))=2これを② しただって、①②より 1+1=2となる」と。
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