第2話

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 さて、大抵サクッと読み飛ばしてきたはずだ。要はペアノの定理である。  この様に答えれば、間違いなく僕が天才であることが理解できるだろう。  これはググったのをコピペしたのではないかって?  そんなことはない。僕が天才だからわかったのだ。こら、そこの君。確かめてみようなんて些か無粋ではないか?  そのワンタッチでググろうとする指をおろすんだ。そう、よし、いい子だ。  算数の時間。先生は僕の想定通りの行動をしてくれた。 「ではどうして1+1は2になるか、わかる人」  手を挙げたのは二人。僕と白鳥(しらとり)だ。  白鳥というのは生意気なガキである。僕の隣の席のミカちゃんが「頭のいい人が好き」と言ってから、何かとこの天才につっかかってくる。  彼もまあまあ頭のいい人間だが、あくまで凡人の中ではというレベルだ。 「では白鳥君」  運の悪い男だ。きっと彼は「リンゴ一個とリンゴ一個で二つになるからです」というのだろう。普通の一年生ならば優秀な答えだ。しかし、その後で僕が天才的な答えを出せば、優秀ではなく普通になってしまうのだ。可哀想に。  白鳥はすっと立ち上がると、ハキハキと答えた。 「0と自然数の集合をMとする。 1、0はMの元である。 2、nがMの任意の元であれば、その後継(successor)と呼ばれるsnc(n)がだた1つMに存在する。 【中略】 よって1+1=2となります。 要はペアノの定理です」  ……おや?  教室内はしんと静まりかえっていた。先生は呆然と白鳥を見ている。当然だ。凡人には理解できない。  ああ成程、ググったな。あらかじめ調べて覚えてきたに違いない。卑怯な男だ、白鳥。  しかし、認めざるを得ない。彼が天才とまではいかないが優秀な人材であることを。  そして、ある可能性が脳裏によぎった。こいつを囮にすれば施設に入れるのではないか。
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