武家屋敷に突入せよ!!

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 皆、俺の本音を聞いて黙ってしまった。辺りに、重苦しい空気が漂っている。  そんな空気の中、最初に口を開いたのはラルフだった。俺と視線を合わせず、悲しそうな顔をしていた。 「悪かった。お前がそこまで思い詰めてたなんて、俺は気づいてやれなかった。こんな最低野郎に着いてきてくれて、ありがとうな。俺、もうお前の目の前に姿見せない。俺にはそれしか出来ないからさ」  そう言うと、俺に背を向けて階段を上がっていく。その背中はいつもの逞しい物ではなく、只後悔しかない弱々しい物に見えてしまった。 「私は、ラルフが可哀想アル。渚は自意識過剰ネ。ラルフはいつも渚のことを守ろうと必死だったのに、今回だってその事をラルフに相談されたから私は来たアル。でも、あんなことを言った渚を私は許さない。最低野郎はそっちアル」  リーはそう言うと、ラルフの後を追うように駆け足で階段を上っていく。  二人が居なくなったことで、重苦しい空気が、更に重くなったような気がする。 「私も……リーと一緒の気持ち」  そして、アリアはゆっくりと語り始めた。 「別に、ゲームオーバーで死ぬわけじゃない。でも、ラルフは誰よりもゲームオーバーは死ぬのと同じだと思っている。だから、私達のことを最優先に考えて行動しているの。昼だってそうだった。ラルフのそういう気持ち、少しは分かってあげて、渚」  アリアはそう言い残すと、俺を置いて先に進んでいく。そして、この場でたった一人になってしまった。  ラルフが、どういう思いであんなことを言ったのか、冷静になって漸くわかった。  リーに怒られて、自分がとんでもなく最低なことを言ったのか気がつくことが出来た。  アリアに教えてもらい、ラルフがどんな気持ちでいつもゲームをしているのか分かった。  思い出してみれば、初めて会った頃も、あの地獄に舞い戻ろうとしている自分を止めてくれていたから、こうしてまだ生きていられるんだ。  いや、それよりも前に狼に襲われたとき、ラルフが助けてくれなかったら、あの時に死んでいただろう。  よくもあんな事を命の恩人に言えたものだ。あの時の自分が今は憎くて堪らない。
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