鬼武者の末裔

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 ラルフは、目の前の敵を睨み付け力強く大剣を握り直す。そして、ゆっくりと立ち上がった。 「まだ立つか。往生際が悪いにも程があるぞ」  黒い短髪をした、侍のような格好して刀を片手に持っている男。このダンジョンのボスである¨鬼武者 源頼朝¨がそう言った。  ラルフも、倒れることが許されるのなら、とっくの昔に倒れていただろう。だが、ラルフの後ろにはHPもギリギリのリーとアリアが横たわっていた。  ラルフ自身、回復薬も底をつき疲弊しきっている。だが、ここで倒れてしまえばこのボスを倒せる者が居なくなってしまう。  源頼朝が一歩足を踏み出す。すると、一瞬にしてラルフとの間合いを詰めた。 「くっ!?」  斜めに振り上げられる刀。それを何とか大剣で防ぎ、源頼朝を押し返す。  源頼朝事態には、力はそこまで強くない。寧ろ、ラルフの方が強い。だが、奴には圧倒的な早さがあった。  今もギリギリで対応できるが、相手のHPはまだ全然減ってない。これから更に速くなる可能性がある。  もし、この場に渚が居たらっとラルフの頭に何度もその考えが過るが、それは決して有り得ないとラルフは自身に言い聞かせて戦っている。  自分のせいで渚が放れて行ってしまったんだ。ピンチになったから戻って来てなど虫がよすぎる話だ。 「もう少し速くしてみよう」  源頼朝はそう呟く。すると、さっきまでの動作すら見せずに間合いを詰めて来た。  ラルフも反応しきれず、切られその場に膝を落とす。そして、ひんやりとした刃を首に突きつけられた。 「先ずは一人目だ。安心しろ、仲間も直ぐにお前のところに送ってやる」  ラルフは悟った。もう、こいつに勝てる奴は居ないと。  ゆっくりと目を瞑り、ゲームオーバーの瞬間を待った。すると、急に首に突きつけられている刃が離れ、続いて金属がぶつかり合う音が聞こえた。  何事かと思い、目を開くとそこにはずっと待ち続けていた男……渚が、源頼朝と鍔迫り合いをしていた。 
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