灯火

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          □ 「……なるほどな、猫が人知れず死ぬのは鉄の掟があるからなのか」 「うん、だからね、捺津お兄ちゃんもあるのかなって思ったの。八雲はー?」 「送り犬はどうかわかんないけど、犬は主に絶対の忠誠を誓うって掟があるよ」  忠犬、という言葉があるように、やはり犬には主に忠誠を誓うのが当然と考えられているらしい。 「まぁ、最近の人間は、三味線の皮に猫じゃなくて犬の皮を使うようになったんだ。それでも人間を主と思っている同族がいるのが、僕には信じられないよ」  小さな妖とは言え、同族が抱いてきた憎しみであったり無念であったり、少なからず影響を受けている二人。いくら彼らが子どもであっても、持っている考えは、人間が生み出した負の産物である『妖』なのだということがわかる。 「あ、捺津お兄ちゃん、京都が見えてきたよ」 「何か、こう、ほっぺたがチリチリして痛い」  肌が焼けるような火傷にも似た痛みがはしる。妖力が弱いためにそう感じるのかはわからない。だが、京都に近づくにつれて感じる、背筋が凍るような妖気。おびただしい数の妖が集まり蠢いているのがわかる。 「百鬼夜行、お祭りだって聞いてたけど、考えてたのと違うね、八雲」 「何か、怖い。楽しいのかもしれないけど、何か違うんだね、華南」  二人が想像していたものとは違った本当の百鬼夜行。管狐も、百鬼夜行の和の中に入るのは嫌なのか、少し離れた場所に俺たちを降ろしてくれた。
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