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『この世が終わるとなると、面白いものが顔を出すのですね』
「おや、あなたは北海道にいたはずでは? こんなところで何をしているのですか、"ののさま"?」
天狐の頭上、電信柱に寄りかかるようにいたのは真宗のお寺にいる者で、子どもたちから"ののさま"という愛称で呼ばれている仏である。本来、会い見えるはずのない仏と妖だが、遥か昔に会ったことがある二人である。
『あなたこそ、あの場所から出られないはずでは?』
「そのはずだったのですがね、色々あるのですよ、私にも」
『世が滅ぶとなるとあなたも姿を現すということですか、面白い。あぁそうそう、今日人里に降りたのですが、ある子どもに会いました。いつの時代も、子どもは可愛いものですね』
「まさか、また狐の姿で、ですか」
キタキツネの姿を借りて、しばしば人里に姿を現しているという"ののさま"。最期の日とされる今日もまた。
『穢れのない無垢な魂は美しいですよ。闇をも照らす光のようで』
「私も、美しく光輝くものを先程見ましたよ」
『子どもの魂のように?』
「えぇ。あの光は──」
何かを言った天狐は、先程までいた者たちの向かった方向を見つめる。寂しそうに見つめる天狐同様、"ののさま"も何処か寂しそうであった。
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「天狐さまから、管狐貸してもらったから、京都にすぐ行けるね、八雲」
「一旦木綿のおっちゃんのとこ行こうと思ったけど、まぁ良いか」
人の世に降りたのは、一旦木綿に会うためだったらしいが、管狐のほうが良いということか。町を出た俺たちは、華南の手のひらサイズの狐とにらめっこしていた。どうやらこの狐、管狐というらしい。だが、小さい。京都まですぐどうやって行くのだろう?
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