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「わかるよ。同族が命を絶つ苦しさは」
『お前、猫又なんだろ。死ねないんじゃねぇのかよ』
猫又を含め、妖の多くは不老不死と考えられていて、そう簡単には死なない。しかし、猫又は妖の中でも人間に『殺される側』となりやすい。
「この三味線の皮、何で出来ていると思う?」
『そういやぁ、たまに見る猫又、どいつもみんな三味線持ってるな』
「答えはね、猫のお腹の皮。美しい音を紡ぐっていって、人間に捕まった猫は、皮を剥がされて三味線になるんだって」
皮を剥がされた猫は、三味線の皮となった後でも、その怨みや憎しみを抱き続ける。猫又が皆、三味線を持っているのは皮を剥がされた同族を弔うためだと、華南は生まれたときから教わっている。
「三味線の皮になって死んじゃう猫又、結構多いんだよ。私のばばさまも、三味線になっちゃったんだ」
『猫又にも掟があるんだな。さて、俺はそろそろ行くよ。もうすぐ世界が終わるからな。最期は妹の側にいたい』
「わかった。じゃあ、またね」
「またね」それは、この世において二度と果たされることのない約束。そうだとわかっていても、声をかけた。
痛みも苦しみもない、同族同士が殺しあうことのない、そして大好きな、大切なヒトたちに会える七色に輝く『虹の橋』と呼ばれる場所。この世が終わったら、あの男の子にまた会えるような気がした。
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